主観:カゲロウのイメージの変化と好きな二重人格について

仮面ライダーバイス6~9話までを見てカゲロウのイメージが変わってきたので、今後また変わる前に書き記しておこうかという記録です。

 

二重人格キャラが好きだ

主観の話をする前に自分の話を少し。次の見出しまで読み飛ばしても大丈夫。

 

私は物心が付いたころから二重人格キャラに惹かれていた。

日本で育てばみんなが通るだろうアンパンマンでは、ロールパンナちゃんが「悪の心が妹を傷付けてしまったらどうしよう」と苦悩する姿や、メロンパンナちゃんが悪いロールパンナちゃんを止めようとする姿が印象に残っている。

勇者指令ダグオン』はもう中身をほとんど覚えていないが、カイと良い感じだった大人のお姉さんが敵に洗脳されて別人のようになりカイに襲いかかるエピソードはまだ覚えているし、タイトルすら覚えていないファンタジーアニメでも「お姫様が記憶喪失になって雰囲気もいつもと違う感じになってしまい周りがあたふたするギャグ回」とかは記憶に残っていたりする。

特撮だと『電磁戦隊メガレンジャー』でメガブルーが洗脳される回。数年前にメガレンジャーを見返したら他のエピソードは全然覚えていないのにここの予告だけピンポイントに覚えていて驚いた。

そして思春期にたまたまラーメン屋さんで開いた週刊少年ジャンプで、自分の左手を串刺しにして「思い知ったか獏良了!」と自分の名前を叫び狂気混じりに哄笑する男と正面衝突をした。本来の人格が唯一制御できる左手に穴を空けて勝ち誇る悪き魂。『遊☆戯☆王』の闇バクラである。

この出会いでこの傾向を自覚する。遊戯王には現在までお世話になっています。

ビックリマン2000(アニメ版)』のコーラルとアズールに出会ったのも同時期だったと思う。この2人は1つの体を共有し、人格によって姿も種族も変わる(どちらが元の姿かということは後に語られる)。特に好きなのはこの2人がお互いを「兄」「妹」と認識しているところだ。当初はお互いの存在を知らなかったが後には鏡越しに会話ができるようになる。オッドアイが鏡映しに左右逆というキャラデザもよかった。

 

以降しばらくは意識的に二重人格や憑依・洗脳を取り扱った作品を探していた気がする。

 

特に印象に残っているのは『サイコドクター 楷恭介』1巻に登場した結婚詐欺師と聖職者の人格を持つ男だ。初めはただの詐欺師として登場したが、そこそこのページ数を使って詐欺師のキャラと主人公の心理学者によるプロファイリングを描いた後、プロファイリングが外れ予想外の一面が――からの同じ顔で穏やかに微笑む神父様の登場という演出は効いた。利き手まで違うから演技ではなく別人格、解離性人格障害を引き起こしたトラウマは聖職者の道に進んだ原因でもあった、というミステリー的なストーリーも面白かったし、主人公に協力する刑事が最後に「心神喪失かあー」みたいに嘆いていたのも(笑い事ではないが)ちょっと笑ってしまった。

 

ちなみにというか、初めて見た仮面ライダーは『仮面ライダー電王』第6話『詐欺師の品格』。この回でなければ今でも平成ライダーを食わず嫌いしていたと思う。ロッドフォームは俺の嫁

 

近年ではそこらと無縁のコンテンツに軸足を置いていることもあってこの趣味も若干落ち着き、「積極的に探しはしないが、好きな作品に出てくると嬉しい」という属性になっている。『仮面ライダービルド』の葛城/戦兎だとか、『ウルトラマンジード』での伊賀栗レイトとウルトラマンゼロのコンビだとか。

といっても別のキャラ目当てで始めた『FGO』でヘンリー・ジキル&ハイドに見事に引っかかり、人生で初めてのミュージカル観劇に行ったりはしている。見たのは2018年版の『ミュージカル ジキル&ハイド』。原作とはだいぶ別物で面白かった。ジキルのキャラが蛮野天十郎と葛城巧ぐらい違う(主観)。dangerous gameがあんな場面の曲だとは思わなかった。

 

長くなったが、これが私にとっての「二重人格」である。

 

本題:カゲロウのイメージの変化について

といって本題の前に定義を示しておく。

二重人格キャラの個人的な分類分けがある。

・何かが取り憑く、融合するなどの憑依タイプ

 闇遊戯、『電王』のイマジン、ウルトラマンゼロなど

・デフォルメされた解離性人格障害

 抑圧やトラウマなどが原因で本人の心がいくつかの人格に分かれている、いわば狭義の二重人格。精神医学のことは分からないのでデフォルメとつけさせてもらう。フィクションだと現実よりカジュアルに発症するし。

上記の洗脳など他にも分類はあるし、複合タイプもあるが今回はこの2点だけを話に出します。

 

さて本題。

最初に書くと私のカゲロウのイメージは

第6話:「あっ、はい、好きです」「悪い人外(オトコ)って良いよね……。しかも弟と同じ顔」

第7話:「性格が悪い。殺意が高い。最高」「主人公はカゲロウの存在すら知らないのが最悪すぎる」

第8話:「やってることは特撮の人外としてはめちゃくちゃ小さいんだけどそれが性格の悪さに生々しさを与えている」「カゲロウ/エビルの変身エフェクトめっちゃいい」

第9話:「これはデフォルメされた解離性人格障害だ」「カゲロウは子供だ。兄の気を引きたい、それでいて反抗期の弟だ」

といった感じの変遷だ。

 

カゲロウは『仮面ライダーバイス』第6話で存在が明らかになった(登場した、ではない)五十嵐大二の体内に棲む悪魔である。宿主の肉体を乗っ取り、仮面ライダーエビルに変身して(正体を伏せたまま)大二の兄・五十嵐一輝/仮面ライダーリバイを付け狙う。

このカゲロウが初めて名乗るシーンがめちゃくちゃ好みだった。

特撮でたまに出てくるV系っぽいビジュアルの顔出し人外キャラ(V系に全然詳しくないので雰囲気で書いている)。難のある性格を表すような指を動かすクセ、それによく映える黒い爪と多数の指輪、萌え袖。

そして五十嵐大二と同じ顔で、大二を「あのアホ」と言い捨て、大二ならしないだろう悪い笑みを浮かべる。

 

あっ、はい、好きです。

 

放送終了後、大二/カゲロウの二役を演じる日向亘さんの「実は5話も大二のふりをしたカゲロウだったんです」というツイートを見て第5話を見直した。

すると出るわ出るわ、なぜ最初に見たときは気が付かなかったのかというほど大二とは違う。市民の被害を気にしていたはずの大二が一般人を囮にする作戦を立案し、五十嵐家での作戦会議中(仕事中)に腕を組んでいる。一輝にわざわざ嫌味を言い、なにより「兄ちゃん」と一度も言っていない。ここまで揃うと別人である。

 

この5,6話の時点では、カゲロウのイメージは攻撃的で狡猾。一つ屋根の下に暗殺者がいる最悪の事態になった、というものだった。

ターゲットである一輝には存在が知られておらず、弟・大二の姿を使って動くことができる。もしカゲロウがなにかやらかして、バレたとしても「大二のせい」あるいは「大二がそんなことするはずがない」とできて非常に有利だ。

変身前だけではない。カゲロウが変身するエビルは隠密行動向きという設定があり、初登場となる第5話ではまさにその通りなんの脈絡もなくリバイの背後に立っており、刃を向けるのである。本当に脈絡がなさ過ぎて何度か見てると笑えてくる(7話も同じでいきなり生えてくる)。そして遠慮なく後ろから斬りかかるし、首を狙う。殺る気満々である。

 

7話でもこのイメージは継続する。特に必要もなく一輝を煽ったり(おかげで門田ヒロミが大二を疑い、デモンズに変身する一因となる)、宿主の大二にわざわざ自分の存在を示すなど嫌がらせが光る。「人の心が分かっているから嫌がらせをする」タイプの倫理観の無さがまさに悪魔だ。

この時の大二とカゲロウのやり取りなのだが、カゲロウは「お前の体内で生まれた悪魔だよ」と大二にカゲロウという悪意の存在を認めるよう迫る。「お前が望んだんだ」「俺が――望んだ?」「兄貴のいない世界だよ。俺が代わりに叶えてやる」と、兄・一輝を殺したいのは大二であり、無関係な悪魔が勝手にやっているわけではないと言いたげである。

 

バイスの世界では、悪魔は人間の心から生まれる。これだけ聞くと欲求のあらわれと捉えてしまいそうになる。実際、これまで作中に登場した悪魔も、例えば契約者が憎む相手を襲い、あるいは母の気を引くための狂言誘拐に利用された。それを踏まえるとカゲロウの主張も真であるように聞こえる。だが引っかかるのはカゲロウは大二と契約しておらず勝手に動いているという点だ。大二が兄を殺せとカゲロウに命令したわけではない。

例えばプリキュアシリーズでは作品によっては人間の心からモンスターが生み出されるが、それは利用された人間そのものの意思とは個別の存在であることが多い。暴れ出すとっかかりがその人間のストレッサーであるというぐらいである。

カゲロウの場合も、ほんのちょっとの悔しさから生まれた個別の自我が、悪魔なので悪意に全振りして「兄貴を殺す」と言い出している可能性は十分ある。

この時点での自分のツイートを探すとこんなことを言っていた。憑依か別人格か判断しかねていたようだ。

この世界の「心から生まれた悪魔」がどこまで宿主と別個の存在であるか、という点はまだ情報が少ない。4クール番組で1クールも終わっていないしそりゃそうだろう。

 

 

第8話、温泉回である。もうめちゃくちゃ面白い。この回に登場する陣営が全て顔を見せ、敵対しているエビルを含めたライダー変身者3人を含む男達が裸の付き合いで牽制し合っている絵面まで全部アバンタイトルで済ませるテンポの良さがすごい。

この回のカゲロウは大二として五十嵐家の家族旅行に同行しながら、一輝に出された毒入りジュースを処理し、サプライズパーティーの場まで待ち続ける。そして、五十嵐家全員の前で変身し一輝を襲う。「愛する家族の前での公開処刑、最高だろ?」と(この「最高だロォ?」って語尾が非常に良い)。

これらの行動からカゲロウの「一輝を殺す」という目的は「自分の手で一輝に勝ち、それを皆に見せつける」ということだと推測できる。ただ一輝を殺すだけなら今までいくらでもチャンスはあった。エビルは前述の通り隠密行動向きだし、なによりカゲロウは弟・大二として同じ家にいるのだから。しかしカゲロウは暗殺はしなかった。兄より優れていると知らしめないと彼にとっては意味がないのだ。

放送開始前に映画館で配布されたシークレットブック収録の漫画や本編の第3,4話で、仮面ライダーに変身した一輝に対して大二が悔しさを覚えていることは描写されていた。その兄を越えたい、俺もできるのだと認めてもらいたい、そんな気持ちが大二のどこかにあったのだとしたら納得できる。行動しているのはカゲロウだが。

襲われた一輝は弟・大二の凶行に呆然とする。自身の悪魔・バイスに促されてやっと変身してからも防戦メインだ。「どうしたんだよ、大二!」と問い質す一輝にカゲロウは自分は大二ではなく大二の悪魔・カゲロウだと告げる。

ここで私は引っかかった。大二の心から生まれた悪魔は、大二ではなく自分として一輝を殺そうとする。

あと大二じゃないと分かった途端に「弟を返せ!!」と思いっきり攻撃してくる一輝もちょっと怖い。この人は何故こうも家族に執着しているんだろう。五十嵐家の長兄というアイデンティティを失ったらどうなるのか、怖い物見たさで気になってしまう。

第8話を終えての感想は上述の通り、やってることは特撮の人外としてはめちゃくちゃ小さいんだけどそれが性格の悪さに生々しさを与えている。とはいえニチアサで放送できる範囲の性格の悪さに落ち着いてきたなと思っていた。

 

そして第9話。ビートバスター似のお兄さんの胸倉掴んで無言でバイスタンプのスイッチを押す時の表情が100万点。カゲロウの性格と治安が悪ければ悪いほど心が潤う人間がここにいます。予告時点では詐欺グループが傷だらけなのが疑問だったのだが、カゲロウが1人で殴り続けた結果だとは全く思わなかった。詐欺師とはいえ可哀想すぎる。なんで先週一輝をボコった時にその本気を出さなかった。

それとデモンズに対する「お前じゃないんだよね」一輝にしか興味がなくて最高である。声といい立ち姿といいマジで興味なさそうなのでここだけでも見て欲しい。この人の演技すごい好きだな。

 

念願の一輝と対面したカゲロウは、大二を返せと息巻く彼に叫ぶ。

「いつまで大二大二って言ってんだよお兄様!」

もうこれは「もう1人の弟」である。カゲロウは大二の心から生まれ、大二に対しては「俺の願いはお前の願い」と同一性をアピールし、一輝に対してもカゲロウは大二の劣等感であると説きながら、同時に「大二ではなく俺を見ろ」と訴える。目立つ兄を羨ましいと思う大二の影響とも取れるし、「お兄様」については「もういない大二くんのお兄様」という意味の煽りだろうとしても。

ちなみに神代家のお兄様によるとこの回でのカゲロウの「お兄様」は計5回だそうである。

 

さて、この回では大二とカゲロウの対話及びリバイVSエビルの戦いの中で、カゲロウの出自についてが彼自身の口から露悪的に語られた。子供の頃から大二の中にいたこと、嫉妬が悪魔のエサとなること、今までは無意識に大二が抑えていたが、第4話での一輝の行動が(客観的に見てもあの時点では最良に見えたあの契約が)引き金を引いてしまったこと。

正直これはあまりに酷だと思った。じゃあ一輝は他にどうしたらよかったのか。あの時点では仮面ライダーとして戦える人も他にいなかった(直前に大二が狩崎に掛け合い断られている)のに、だ。

大二も理性では分かっているだろう。契約書と引き替えにベルトを渡す際の笑顔を見るに、感情面でも最初はともかく、最終的には8:2ぐらいで納得が強かったんじゃないかと思う。ヘタしたら9:1かも知れない。

そのわずかな納得できない部分が悪魔を表出させる引き金になったのだろうか。そう考えるとこの世界の悪魔はだいぶ怖い。もちろん、10年前後も溜め込んでいたから特別力が強かった可能性も高いが。

 

ともあれ、私は第9話で「お兄様」と嘲りながら大二の隠していた秘密を暴き、自分の存在を主張するカゲロウを見て思った。

この悪魔はデフォルメされた解離性人格障害だ。彼は大二の「見たくない自分」を押しつけられた別の自我なのだ、と。大二に作り出され、彼の一部を共有し、しかし別の自我として己のことも主張する。それを特撮番組や悪魔キャラとしてデフォルメしたものがカゲロウではないだろうか。

(もちろん現実の解離性人格障害とは違う。ただ、創作物ではしばしばこうしてドラマティックにされた二重人格が出てくる。ましてやリバイスの世界は悪魔がいるのである)

まあここら辺は東映公式にしっかり答えが書いてあったりするんですがね!書いてから気が付いた。

 

主観のまとめを。

悪魔なので性格や口が悪く、治安も悪い。ただ、敵対的な人外にしては目標が小さいのでやることもあまり大きくない。根底は、兄に反抗し、己の存在を主張し、何故黙っているのかと宿主を責める、聞き分けのない反抗期の弟。

それが現在私がカゲロウへ抱くイメージである。

悪だが、思っていたより邪ではなかったなという印象だ。

 

ツーサイドライバーについて(今後についての願望)

 

versus up.そんな英熟語ないのになんとなく言いたいことが分かる。

玩具の情報と同時に知らないライダーの姿と名前が出て「やっぱり二人分だった」「やっぱり大二主体での変身形態もあった」と言われたツーサイドライバー。10話予告を見るに白いライダーは大二が変身するので間違いなさそうだ。

どちらのライダーに変身するときもバイスタンプは同じ蝙蝠を使うというのが非常によい。私の好きな二重人格だ。ライダーのデザインが「黒・グリーン・羽を閉じた蝙蝠」と「白・オレンジゴールド・羽を広げた蝙蝠」、名前が"evil"と"live"で対になっているのも滾る。私の好きなジキルとハイドだ(善悪二元論的な二重人格をこう呼んでいる)。

ライブが遠目には聖職者然としたデザインながらエビルの黒とグリーンを隠し切れていないのはまた別の厨二心が疼く。体内に悪魔が棲む若者が聖職者みたいなナリで銃をぶっ放す、シュミの煮凝りみたいな設定だ。

この善悪併せ持つ二面性をまとめて愛したい。1人になってはversusにもならないのだ。だからカゲロウ消滅しないでくれ。折角のギミックなのだから時にはライブを、時にはエビルを、両方見たいじゃないか。それとカゲロウのビジュアルが好きなので見られなくなるのが惜しい。

『剣』の睦月が蜘蛛を切った戦いは好きだし、ジキルとハイドにも『対決』がある。解離性人格障害なら統合という道もあるだろう。いずれそうなるのは構わない。でもせめて30話ぐらいまではそこにいてくれないか。その辺りでライブの強化フォームが来ればエピソードに絡められるし。私は主導権争いをする二重人格も好きなんだ。大二には悪いがどうか頼む。

欲を言えば最終回まで、態度を軟化させることはあっても消えずにいて欲しい。